●源流のフライフィッシング  〜TEXT by 小村 政人

 ではシミュレーションしてみよう。時は4月、ポイントは広島県は奥三段峡の再上流部。アクセスにはかなりの悪路のためそれなりの装備と覚悟が必要だ。また最盛期の源流釣行ではないため、状況次第では撃沈する可能性も高い。
気温は14〜15℃、水色も多少なりに濁っているものと考えられる。
 そんな状況を設定すると、予め予測できる限りのパターンのフライをタイイングし、あらゆる状況に対応できるよう準備をしておくことが必要だ。準備には過去の実績フライはもちろん、マッチ・ザ・ハッチ系の20〜30#ミッジサイズ、またドライフライのみならずニンフ、ウエット、ストリーマーとあらゆる種類の選択が必要だろう。
 ポイントに選んだ奥三段峡は、進入口が樽床ダム(聖湖)を後方に見下ろす位置にある。奥三段峡はそのアクセスの悪さから、あまり観光地としてはメジャーではなく、またアングラ−でさえも滅多に訪れることのない、まさに中国地方きっての秘境と呼ぶにふさわしい特別な場所といっていいだろう。これは放流魚ではなく、まさしく本物のネイティブが保障されているということだ。
 オフロードを約30分程駆け上がると目的地に到着。おそらく河川の状態は、この時期特有の笹濁りが入り、悪くはない状況だと思われる。気になるのは水温であろう。春は三寒四温、常に変化しているので、その対応が非常に難しい。問題はそれらによる活性の低下である。当然、水温低下は水性昆虫の動きにおおきな影響がある。カゲロウ、はたまた別もものか・・・。マッチ・ザ・ハッチを見極めなくてはならない。
 
 まずはフライを結びラインを引き出す。フライはパイロットフライの定番、エルクヘアカディス改(フラッタリング用に改良し、またフローティングニンフに現地で変型させることができる)である。キャストは大胆にポイントを突く。
おそらく本格的な初夏になるまでは、ここだというレーンにフライを乗せても反応がないだろう。活性は低いはずだ。しかし、流れのほとんどないピンポイントにフライをできるだけ長い時間漂わせて待つとこの時期は効果的。すなわち、とにかく待つのだ。10秒、20秒……。すると、忘れたころに突然フライが吸い込まれるはず。そして、フッキングと同時にロッドが弧を描き、見事なゴギとのファイトがはじまるだろう。



●源流部攻略法

 散発的ではあるが、暖かい日は流れが緩やかな場所でいたるところで反応があり、次々といいファイトを見せてくれるはず。しかし魚の出方は夏の最盛期に比べ非常にスローで、見落としがちなポイントから突然飛び出してくるというケースが目立つだろう。
 これら目覚めの悪い冬眠明けのゴギたちの鈍い反応に対応するテクニックとして、私が気を付けている点は3つある。1つはフライを置くポイント、しかもできるだけ長い時間。つまり流れに乗せないことである。
 2つめはフラッタリングで活性を高めるということ。ゆえにエルクヘアカディス改はかなり有効なのだ。最後に立ち位置である。これは以前にも挙げた最も重要と考えられる要素で、前に挙げた2つもこれが上手くいかなくては無意味といっても過言ではない。立ち位置について文書で表現するのはかなり難しいのだが、うまく伝われば参考にしてほしい。

 まず目安として流れがある場所や複雑な場所では極端な話、1mまで接近しても問題ではない。しかし水面がフラットで流れが緩い、またはほとんどない場所ではその水深に関わらず、キャスト可能な限界の距離をできるだけ保つことがチャンスを広げることになる。さらに注意すべき点は、必ずそこにいるという気持ちでフライを送り続けることがいい結果を生み出す。また、フライのまめなローテーションやサイズチェンジはかなり有効である。夏場の渓魚はフライを選ばないがシーズン初期の彼らはなかなかしたたかなのだ。
 さら付け加えるなら、ドライに出ない渋い状況にはフライを沈めてみるのも良い手だと考える。例えばダウンアクロスでヘビーニンフを引いたり、ウエットも有効だ。私はこの方法でグッドサイズを誘い出すことに成功している。お試しあれ。


フラットな瀬でアマゴがバイト! 一気に水面へと導き出す ヒレがきれいなピンシャンアマゴ。ネイティブ特有の美しさだ
狙いを定めてフライをトレースコースに
ロッドがきれいな弧を描き、パワフルなトルクを楽しませてくれる 20cmを超えるゴギ。オレンジの縁取りが源流に映える ストマックポンプで内容物をチェック。やはり春先だけに水生昆虫が多い


●必要以外の乱獲は避けよう

 最後に、渓流シーズンはこれからが盛期を迎えるのだが、シーズン中をより楽しむために必要以上の乱獲となる行為はできるだけ控えて頂きたく思う。えらそうなことが言える立場ではないが、近年、渓流魚の数やサイズが減少傾向にあるようだ。すべてが乱獲によるものとは思わないが、ないとも言い切れないのではと思う。来年もその先も永遠に魚たちに出会える場所であるために、おおげさでなくても決して構わないので、現在のアングラー個々でできることをしていくことが大切なのではないだろうか。





■小村 政人
広島の源流部から北海道のサーモンフィッシング、ニュージランドやロシア遠征、さらにはカナダ、アラスカでキングサーモンを釣り上げるなど、世界中のトラウト、サーモンを追い求めるスーパーアングラー



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